koto's room

50代主婦が独学でインドネシア語を勉強(キックジャパネシア編)

【番外編】高校生の娘が書いたショートショート

娘が学校の課題で書いた作品です。テーマは「りんごが実は〇〇だった」です。

 

 

ウサギのたまご

 

お隣さんからリンゴを貰った。食べようとして包丁を取りだしたところ、私は耳を疑うような声を聞いた。

「待ってください!ボクはリンゴではありません!」

耳をつんざくような高い声。驚いて辺りを見回すも部屋にいるのは自分と、目の前に置いてある赤いリンゴだけだ。

「聞こえてますか?」

また声が聞こえる。今度は音の出どころも分かったが、正直理解が出来ない。

ドッキリなんだろうか、私は渋々そのリンゴに向かって話しかけた。

「えっ、リンゴじゃないってどういうこと?」

「それはボクもよく分かりませんが、自分がウサギになれる存在であることだけは分かるんです。きっとボクはウサギのたまごなんですよ。」

「ウサギになれるウサギのたまご…」

「とにかく、ボクはリンゴではないので切るのはやめてください!」

リンゴは顔を真っ赤にして訴える、いやリンゴは元から赤いけど。

しかしいま我が家にあるリンゴはこれしかないのだ。

そして私はリンゴがとても食べたい。

微妙な罪悪感を持ちながら包丁を振りかざした。

「ごめん…」

「待ってくださ、ギャー!」

自称ウサギのたまごの迫真の叫び声に思わず包丁を置き目をつむる。

少しして目を開けるともうリンゴは喋らなくなっていた。シン、と部屋に静けさが戻る。

きっと幻聴だったのだろう。もしかしたら疲れているのかもしれない。

なんだが少し可哀想なことをした気がする。謝罪というわけではないが切ったリンゴはウサギ型に剥いて食べることにした。すると。

「思い出しました!ボクはウサギ型にしてもらって初めてウサギになれるんです!ありがとうございます、飼育員さん!」

そういうとリンゴもとい"ウサギ"たちはぴょんぴょん跳ねて開いていた窓から元気に飛び出していった。

しばらく唖然とした後、私は今日のデザートを失ったことに気が付いた。

 

(2017.10月 高校生の娘作)