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「半落ち」☆横山秀夫を読んで…。

 

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)

 

 

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)

 

 

 

もし妻(夫)がアルツハイマーになったら、あなたはあなたのままでいられますか?自分を見失わない自信がありますか?

 

おすすめ度  ★★★

 

 

 

 この作品のタイトルを見た時、どんな話なのか正直想像できなかった。「半落ち」という言葉が警察用語であることを知ったのは、30頁を過ぎたあたりからだった。「半落ち」とは容疑者が犯行の一部を自供していることで「完落ち」とはすべて自供したことだそうだ。

 

 この作品は現役警察官が起こした殺人事件に関わる警察官、検察官、裁判官、記者、弁護士、刑務官の告白から成る小説である。現役警察官が起こした不祥事を目の当たりにしてそれぞれが考えたことは保身、ねつ造、暴露、成敗である。

そして事件の原因となった現代の社会問題でもある介護殺人がこの小説の重要なテーマとなっている。若くしてアルツハイマーを発症した妻が大切な息子の命日を忘れてしまう自分が辛く「殺してほしい」と望む。次第に壊れていく妻を見て、苦悩の末それを叶えた容疑者。殺害を自供したもののその後の2日間のことは話さなかった。その空白の2日間がマスコミにより大きな問題となった。

 

 

 自分が殺めた妻を残して、容疑者は何をしていたのか?死に場所を探してさまよっていたのか?女に会いに行ったのか、憶測が憶測を呼んだ。 周りで関わっている特別公務員の思惑が交差し、この容疑者を成敗しようと試みるも、最後には「この男を死なせてなるものか」という言葉が出てくるところが不思議だ。この容疑者の「澄んだ目」が魔法のように彼等を惑わせるのか?

 

 

 この小説のキーワードとして、「人間五十年」がある。幸若舞の敦盛にある言葉である。 49歳である容疑者は何故この言葉を書き残したのか?

空白の2日間は息子の死に原因があった。その謎はぜひ小説を読むことで紐解いてほしい。著者が認知症や介護問題をどれだけ研究をし、事実確認をしたのかわからないが、医療関係者の方にもぜひ読んでもらいたい。ただテーマが重いだけに若い読者には敬遠されるかもしれない。

 

 

    もし自分の家族がアルツハイマーになって、苦しんでいる姿を目の当たりにし、殺してほしいと懇願されたとしても大切な人を殺める行為だけは自分はしたくないと思ったし、優しい殺人者などありえないと強く信じている。

 

 

 余談になるが、現在奇遇にも認知症の可能性のある高齢者を見守るネットワークの仕事に携わっている。自分の親よりはるかに若くてもこのネットワークに登録している高齢者が多い。年間約300人が登録している。時々警察より登録者が行方不明になったと連絡がある。有料であるが、携帯型GPSも提供しているがやめる登録者も多い。それはGPSを持っていくのを忘れることが多いこと。たばこのライターよりも大きいため持ち運びが不便だったり、中には捨ててしまう登録者もいるようだ。長寿大国になって長生きできるのはありがたい話だが、健康で長生きしたいものである。

 

 

 自分の親は闘病もしたが認知症とは現在無縁である。ただこの先認知症にかからない可能性はゼロではない。その時にこの容疑者の気持ちがわかる時がくるのかどうか・・・。

 

この先ますます高齢化社会が進むと言われている。この小説を読んで、認知症、介護問題について改めて考え、できる範囲で対策したいと思った。