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『凍った夏』 ジム・ケリーを読んで…。

 

凍った夏 (創元推理文庫)

凍った夏 (創元推理文庫)

 

 

キャッチコピー

 

007みたいな派手なアクションシーンはないが、本を開くとイギリスの田舎風景に溶け込んでいて謎解きゲームに引き込まれてゆく。ジクソーパズルのピースがそろった時のような、ある種の爽快感はクセになる。

 

評価★★★★

 

 

著者であるジム・ケリーは2006年に英国推理作家協会図書館員賞を受賞している。この作品は、代表作『水時計』のシリーズ4作目である。新聞記者である経験を生かして作られた作品であり、465ページのなかなかの分厚い文庫本になっている。

 

作品の概要としては、新聞記者である主人公ドライデンがふと気に留めたある男の凍死事件を引き金に、つぎつぎ明らかになる事件の真相。過去の記憶と現在が重なったとき訪れる恐怖。「彼にとって人生とはたいていが観察するものであり、参加することには慣れてなかった」という一文からも何か憶測できることがあると思う。

 

この作品の魅力は情景描写が豊かなことだと思う。情景描写が長いと読み飛ばしてしまう私の悪いクセが出ることもなく、イギリスの田舎風景と自然の美しさ、細かい人物描写によって想像力の拙い私でも安易に画像化できて読み進めることができた。実在する地名などはグーグルマップで検索し自分の想像力との違いを確認することができた。そんな作業も苦にならなかった。

 

主人公ドライデンと相棒のハンフとの関係は、ホームズとワトソンと似通っている部分はあるかもしれない。ハンフはドライデンのお抱え運転手であり、エッグサンドイッチを手渡す奥さんのようなものであり、ピンチの時に助けにくるヒーローみたいなものである。

 

ドライデンを待つ間にハンフが愛車で語学テープを聞いて習得し旅行へいけるまでになっているのがすごい(笑)この作品がシリーズ4作目なので、ハンフがこれまでどんな言語を習得したのか気になる点である。

 

また著者は、この作品を通して、イギリス国内で低体温症による死亡者について、教会での児童虐待の事実、閉じ込め症候群について教えてくれた。私はこの作品をイギリス好きな人にはぜひ読んでほしい。作品の中にあふれるイギリス感がたまらないと思う。私は推理力が足りないのか残念ながら自分が思った人物が犯人ではなかったが、われこそは謎解きに自信のあるという人にぜひ読んでほしいと思う。