kotoseiryu888’s blog

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「木暮荘物語」☆三浦しをん☆を読んで…。

 

木暮荘物語

木暮荘物語

 

 

人は命の終わりが見えた時、無性に交尾したくなるのだろうか?何事もなく、けれど家族でも友人でも同僚でも恋人でもないひとと、しゃべって笑って関係を築いていく日常が幸せへと導いているのかもしれない。

 

お気に入り度★★★

 

東京にある築ウン十年のボロアパートがこの小説の舞台となります。章ごとに主人公が変わる手法で話が進んでいきます。4人の住人と彼らと関わり合いのある2人が主人公になっています。

 

私がこのタイトルを見た時、最初に思い描いたのは有川浩さんの『三匹のおっさん』みたいな「ほのぼのストーリー」でしたが、実際は「人間の性と欲望が絡んだ泥臭いストーリー」でした。

 

死ぬまでにもう一度燃え上がるような営みがしたいと切望する大家さんの願いは叶うのか、3人の男を手玉にとる女子大生の本当の苦しみとは?おんぼろアパートをいいことにのぞきが趣味になったサラリーマンと女子大生の関係とは?花屋の地味な女は行方不明の元カレが帰ってきて三角関係に。駅のホームの柱で見た男根のようなものを見た一組の男女、その二人の関係は?円満の花屋の夫婦にまさかの裏切りが。彼女をあきらめきれなかった元カレの思いはどこへ?

 

それぞれの欲望と現実が交差するなか、薄い壁でつながったおんぼろアパートの切れそうで切れない蜘蛛の糸のようなつながりが人々を癒しているのかもしれません。

 

キャッチコピーに書きましたが、人は命の終わりが見えた時、無性に交尾したくなるのだろうか?私にはわかりませんが、それは愛されている実感がほしい、寂しく死んでいくのは嫌だという人間のエゴから来るのかもしれません。しかし動物のような交尾だと愛や恋の言葉をささやくこともなく、発情したら挑みかかるだけの身勝手な衝動であるのは間違いないと思います。

 

何事もなく、けれど家族でも友人でも同僚でも恋人でもないひとと、しゃべって笑って関係を築いていく日常が人間の本来の幸せへと導いているのかもしれないとこの本は教えてくれます。